【数学Ⅲ】積分計算の順序・思考_0から始める積分講座(基本~最難関まで)その①

 単純だけど、重要。なのに知らない人が多い、「積分計算の順序・思考」が今回の内容です。

 

注意

・講義その①ですが、②以降の内容を多分に含んでいます。なので、講義が進む度に復習して(思い出して)欲しいページになっています。

・つまり、分からないことがあっても安心して次の講義に臨んでください!ということです。

 

積分計算の順序

式変形

  (置換、部分積分、部分分数分解、King Property、積→和、等々)

  ※②or③に進めるまで繰り返します

 

合成関数の積分(=微分形の発見)

  ※使うまでもなく③にいけることもある

 

公式に基づく積分

 

大部分の積分計算はこれに従います。本当に重要です。

 

 一方で、積分計算時の思考は、順序とは逆になります

 

積分計算の思考

与式が公式にあるか

  ・ある→計算開始

  ・ない→②へ

 

合成関数の積分ができるか(=微分形が発見できるか)

  ・ある→合成関数の形にして①へ

  ・ない→③へ

 

式変形をしよう

  ・最も適した式変形を行い、②へ

 

 この順序で重要なのは、式変形より合成関数の積分を先に考えている点です。なぜこのような順序になっているかというと、式変形した後に合成関数の積分をするパターンは多いのに対し、合成関数の積分の後に式変形するパターンはほとんどないからです。

 更に、もっと根本的な理由を挙げるとすれば、

「合成関数の積分は公式の拡張版」

と考えられるからです。つまり、実質①だという考えです。後の講義で詳しく解説しますね!

 

 さて、最後に、上記の「積分計算の順序・思考」に基づく計算例を示します。

例題

 まず、この式が公式にあるかを考えます。・・・①

ないですよね!

なので、次は合成関数の積分が出来るかを考えます。・・・②

 残念ながら、微分形を発見できません。。。

よって、式変形を施します!・・・③

 この、分母よりも分子の次数が多いパターンは、次数下げ(分子÷分母)の式変形が最も適していますね!(分からない人も、今後の講義で扱うので大丈夫です!)

式変形すると、以下の形になります。

 さて、式変形したので、再び合成関数の積分が出来ないかを考えます。・・・②

出来ますよね!

なので、合成関数の形にします。すると、以下のようになります。

ここで再び、式が公式にあるかを考えます。・・・①

ありますね!

第一項は

第二項は

の"a=1"の場合ですね!

 

 よって、以下のように積分計算することが出来ます。

 

計算完了!

 

 この例題を通して察して頂いた方もいるかと思いますが、積分計算のキモは式変形です。

「式変形で如何に合成関数を含む公式の形にもっていけるか」

これが全てです。逆に、公式と合成関数の積分は前提になっています。

 

 積分計算が苦手な人は、公式の暗記不足と合成関数の積分の理解不足が原因であることが大半です。

 

 よって本講義は、公式の暗記→合成関数の積分→式変形の順で行います。次回は積分公式です。よろしくお願い致します!

【数学Ⅲ】積分は才能より努力_0から始める積分講座(基本~最難関まで)その⓪

積分は才能より努力」

 私はこれを声を大にして言いたい。

 

 数学II,III/A,B,Cの中において、極限/微分/積分は努力で極めることが可能であるというのが私の持論です。

 

 明らかに複雑な積分計算の解答を見た際に、

「思いつかない!閃き、才能だ!」

と思う気持ちはとても分かります。私もそうでした。

 

 しかし、積分を理解していくと、ほとんど全てがパターン化できることに気付きます。あの閃きだと思っていたものが、スルリと出てくるようになります。

 

 ただし、この段階に至るまでには、勉強法の違いによる個人差が凄まじいです。ある種、ここまでの到達時間に関しては才能といえるかもしれません

 

「じゃあ、やっぱり才能じゃん!!!」

そう思われる方もいらっしゃると思います。しかしこれ、解決策があります

 

 それは、到達者が到達への道筋を教えることです。

 

「いや、じゃあ学校とか塾の先生も到達者じゃん!教えてもらってるよ!」

まあ、そうですよね。そうなんですけど、学校や塾ではなぜか身に付かない。それには大きな理由があります。それは、

授業時間が足りない!

これに尽きます。先生方も頑張っているはずで、これは間違いありません。ですが、ある程度の演習量を担保しようとすると、どうしても授業時間が足りません。演習量を削れば、もしかしたら到達方法を教えることも可能なのかもしれません。しかし、経験者の私に言わせると、これには大きな弱点があります。それは、

短期的な点数増加が見込まれない

という点です。つまり、学校側としては赤点者が続出することになり、塾側としては成果不足で責任問題を追われることになります。つまり、赤点回避や短期的成績向上には演習が1番なんです。なので、先生方は演習量を増やさざるを得ないのです。

 

 その点、本講座は皆さんのペースで受けることができます。また、私としても最短で、しかしゆっくりと丁寧に教えていくので、到達への道筋を辿ることが可能になるわけです。

あとは努力だけです!!!

 

 さて、長々と書き連ねてしまいましたが、次回より本格的に講義を始めますので、どうぞ、よろしくお願い致します!

 

 なお、「0から始める」と銘打っているので、前提知識は不要!と言いたいのですが。。。2つだけ、前提知識を必要をさせて下さい。それは、

微分公式を知っている、使える

微分積分の関係で、ある関数を微分して積分すると元の関数に戻ることが分かる

  (よく言われる、微分の逆が積分積分の逆が微分のこと)

 

 また、本ブログの趣旨である、「道具として扱う数学」の観点からも重要ですので、科学屋の皆さんも是非、受講いただければと思います!

 

それでは!

対数関数 公式集

 さて、皆さんは以上の公式、全て知っていただろうか。ちなみに、②の派生が③④、⑤の派生が⑥⑦である。派生である以上、②⑤を知っていれば③④⑥⑦は導けるのだが、『道具として扱う数学』としては全て暗記することを強く推奨する。何故ならば、対数関数において重要なことは、「いかに自在に式変形をすることができるか」だと私は考えるからである。

 以下、各公式について説明を述べる。

⓪①:特になし

②:「k」については多くの人がご存じだろうが、「l」については知らない人もいたのではないだろうか。この公式は、「底・真数のルート(√)や累乗(a^n)を無くして簡単にできる」という意味で重要である。以下に使用例を示す。

           

③:この公式は、「底・真数を自由にk乗できる」という意味で重要である。②との差別点は、対数の外(②の例題でいう1/6)を介さずに変形できる点である。以下に使用例を示す。※逆方向も使いこなせるように!

         

④:特になし

⑤:いわゆる「底の変換公式」である。しかし、この形では非常に使いにくく、覚えたはいいが使いどころが分からないという人、多いのではなかろうか。式全体として、どうしても底を統一したい場合に使用するのだが、多くの場合では⑥⑦のように使う。

⑥:⑤においてc=bとするとこの公式になる。それだけだったら覚えるまでもないじゃん!と思うかもしれないが、次の意味で理解しておくことが重要なのである。それは、「分母分子を反転させれば、底と真数を交換してよい」である。この公式の強みは、分数をなくせること、底を統一できることである。以下に使用例を示す。

             

⑦:⑤において分母をはらうとこの公式になる。覚えるべきは、「対数同士の掛け算は、底と真数が同じなら合体できる」という点である。以下に使用例を示す。

           

この使用例からも分かるように、この公式は、一般に3個以上連続していても使用でき、初めの底と、最後の真数が残る

⑧:この公式も知られていない割には重要であり、「指数の肩に対数がある場合、指数の底と、対数の真数を交換できる」ことを意味している。そのため、指数の肩の対数を消すことができる点で有用である。以下に使用例を示す。

              

 以上、対数関数の公式集であった。対数関数は科学においても頻出であり、自在に扱えるようになっておきたい。定期試験・大学受験的にも頻出であり、かつ高得点が求められる範囲である。この公式集の破壊力は、共通テスト(センター試験)の過去問を解いていただければすぐに理解できるであろう。

 この記事が少しでも役に立てれば幸いに思う。では、これにて。

 

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暗殺教室 数学最終問題 別解 (番外編)

「右の図のように、1辺aの立方体が周期的に並び、その各頂点と中心に原子が位置する結晶構造を体心立方格子構造という。NaやKなど、アルカリ金属の多くは、体心立方格子構造をとる。体心立方格子構造において、ある原子A0に着目したとき、空間内のすべての点のうち、他のどの原子よりもA0に近い点の集合が作る領域をD0とする。このとき、D0の体積を求めよ。」(『暗殺教室』より引用)

 これは、暗殺教室14巻(アニメ第2期12話)「空間の時間」において出題された問題である。二学期末テストにおいて、カルマ vs. 浅野学秀の勝敗を分けたこの問題、皆さんならどう解くだろうか。結論を先に述べると、

最適解:カルマの解法(科学的、ひらめき度高め)

通常解①:私の解法(科学的、ひらめき度低め)

通常解②:浅野君の解法(数学的、計算量甚大)

といったところである。以下、問題文の解釈、及び各解法について述べることとする。

 

・問題文の解釈、前提

 まずもって、この問題文を理解することが難しい。結局、何を求めれば良いかというと、「A0の体積+A0に所属する隙間(空間)の体積(=D0)」である。図で説明すると分かりやすいだろうから、体心立方格子構造を以下に示す。(平面図で示すが、立体を想像して欲しい。)

        f:id:aiu38:20220216111548p:plain

図において、赤色の円はA0、青色の円はA0に最も近い原子、ピンク色の領域はA0に所属する隙間、水色の領域はA0に最も近い原子に所属する隙間である。D0というのは、赤色+ピンク色の領域のことであり、これを求めよと問題文には書かれているのである。(この図は簡便に書いてあり、ピンク色の領域は実際はもっと複雑な形であることに注意。)

 さて、この問題を解くにあたって、科学屋としては「単位構造当たり2個の原子が存在する(体心立方格子構造の性質)」ことは理解していなければならない。これが科学的解法では非常に重要となる。もっとも、これは高校化学の範囲であり、いくら椚ヶ丘中学校といえどもここまで授業は進んでいないはずである。であるから、浅野君が科学的解法を思いつかないのも仕方ないことであり、暗殺教室の経験からこれを導き出したカルマは本当に凄い。

 

・浅野君の解法

 この解法は、青色+水色の領域の形を求め、その体積を計算して全体から引き算することでD0を求める。特に、具体的に領域の形を求めるところが非常に数学的ではないだろうか。既に述べたように、この解法は計算量が尋常ではない。なので、概略のみを説明する。

 青色+水色の領域の形は、(青色の円1個+それに所属する水色の隙間)×8と考えることができる(図では平面だから×4に見えるが、立体的には×8である)。そして、なんやかんや計算すると、青色の円1個+それに所属する水色の隙間の形は、3個の三角錐+1個の六角推で表されることが分かる。各体積を計算すると、

立方体(単位構造)の体積=a^3

三角錐の体積=(a^3)/192

六角錐の体積=3(a^3)/64

であるから、

D0 = 立方体の体積 - 8 × (3 × 三角錐の体積 + 六角錐の体積)

     = a^3 - 8 × (3 × (a^3)/192 + 3(a^3)/64)

     = (a^3)/2

となり、D0の体積が求められる。

 

・カルマの解法

 この解法は、「単位構造当たり2個の原子が存在する」ことを用いている。当たり前の話だが、体心立方格子構造(の単位構造)は、原子とその隙間のみで構成されている。更に、全く同じ原子が、全く同じ間隔で並んでいるわけである。これはつまり、1個の原子当たりの隙間の体積は、全て均等であることを意味する。よって、単位構造内の2つの原子(A0と、8つの頂点を合わせて1個に換算した原子)は、隙間を均等に分け合い、かつ原子そのものの体積も同じであるから、単位構造そのものを二等分して分け合っているといえる。よって、D0の体積は単位構造(a^3)の半分で、(a^3)/2と求まる。

 

・私の解法(別解)

 さて、ようやく本題なわけだが、この解法も「単位構造当たり2個の原子が存在する」ことを用いている点は変わらない。ただし、厳密には「単位構造当たり、原子の1/8(=頂点の形)が16個存在する」と考えている。そして、この解法最大の特徴は、「原子の体積は分かっているから、あとは隙間を求めるだけでよい」という考え方にある。以下、実際に解いていくこととする。

 まず、全隙間の体積を求める。原子の半径をrとすると、

全隙間 = a^3 - 2 × (4/3)π(r^3)  ※(4/3)π(r^3)は球の体積公式

となる。ここで、「単位構造当たり、原子の1/8が16個存在する」のだから、均等に隙間を分配すると、

原子の1/8当たりの隙間 = {a^3 - 2 × (4/3)π(r^3)}/16

となる。ここで、A0は原子丁度1個であるから、

A0に所属する隙間 = 8 × [{a^3 - 2 × (4/3)π(r^3)}/16]

                               = {a^3 - 2 × (4/3)π(r^3)}/2

となる。よって、D0の体積は、

D0 = (A0の体積) + (A0に所属する隙間の体積)

     = (4/3)π(r^3) + {a^3 - 2 × (4/3)π(r^3)}/2

     = (4/3)π(r^3) + (a^3)/2 - (4/3)π(r^3)

     = (a^3)/2

と求まる。

 

 以上、3つの解法の説明であった。皆さんはどの解法が好みだっただろうか。やはり科学屋である私からすると、カルマの解法や自分の解法が綺麗だと感じる。数学屋の方は浅野君の解法が好きなんだろうか。まあなんにせよ、中学生時点でこの問題が解ける彼らが化け物であることには変わりない。中学生の私なんかは道中の漸化式でもう手が止まっていただろう、間違いなく。殺せんせーの授業、一度は受けてみたいと思うのは私だけだろうか、なんて。番外編、以上!!!

道具として扱う数学~このブログの方向性~

 突然ではあるが、皆さんは次の問いについてどのように考えるだろうか。

 「数学は好きですか?」「数学は数学者以外にとって必要ですか?」
 様々な意見があるとは思うが、少なくとも、私は数学を好きではなかった。また、今も好きではない。しかし、数学は間違いなく必要である。これは今までの人生で痛いほど実感している。筆者は理系(の科学系)であるが、まぁー使う使う。これでもか、というほどに。しかし、一つ分かったこととして、数学者に必要な数学力と、それ以外の人(科学者、工学者等)に必要な数学力は明らかに違うということが挙げられる。数学者は数学を開拓してゆく。しかし、私たちはその必要はない。ただ、数学者達が開拓した数学をありがたく利用するだけでよいのである。(数学者達には感謝の気持ちを持たねばならないだろう。)

 さて、先ほど、「私は数学は好きではない」と書いたが、厳密にはそうではない。私は数学者的な数学は好きではないが、科学者的な数学は好きである。さらに、恐れずに言うなら得意である。私にとって、数学は科学をするための道具である。私はこれをよくRPGに例えるのだが、数学はRPGにおける、武器・道具・呪文・特技といったもので、科学はモンスター(敵)である。つまり、公式や定理を覚えて理解(武器・道具の入手や呪文・特技の習得)し、それを用いて演習を積むことで理解を深める(レベル上げをする)わけである。そして、その科学(モンスター)に有効な公式や定理(武器・道具・呪文・特技)を選んで解明(討伐)を試みるわけだ。このように考えると、少しは数学に愛着が湧かないだろうか。

 少し話がそれてしまった気もするが、結局言いたかったことは、数学者的な数学に比べて、科学者的な数学は幾分か簡単であるということである。つまり、それほど高い才能を必要とはしない。そして、特に高校数学においては、科学者的な数学で十二分に通用する(ただし、数学者的な数学で臨むよりは暗記量が増える)。よって、このブログでは、筆者の復習と学習を兼ねて、高校生(定期試験・大学受験)や科学系の人達に向けて数学の記事をあげていこうと思う。ただし、更新は不定期になってしまうと思う。申し訳ない。

 まぁ兎にも角にも、思う存分このブログを利用して欲しい。以上。