有機溶剤作業主任者 重要事項 まとめと対策
有機溶剤作業主任者としての特に重要な点についてまとめました。なんせ、教科書が約400ページもあるので、覚えるべき部分をピックアップしておこうというわけです。まあ、ピックアップといっても、有機溶剤作業主任者技能講習で講師の先生が特に重要だ(≒修了試験に出る)といってくださったところってだけなんですが。
というわけで、これから講習を受けるみなさんの修了試験対策としても、有用といえます。講習中・復習中に400ページもの教科書から、見たいページを探し出すのは非常に億劫ですので、このページをコピーして講習に持っていく等、是非ご活用ください。
また、法律改正によって内容が変わりやすい、流動性の高い講習となっていますので、変更点等ありましたら是非ともコメントで教えてください。作業者の安全にかかわる大事な知識なので、皆さんと一緒にこのページを作っていきたいと考えています。
基本的に全て網羅しているつもりですが、修了試験でここに書いてない内容がでた等のコメントもお待ちしています。修了試験に出るということは、覚えておくべき重要な内容ということですから。
以下、まとめです。(修了試験対策なら太字で十分です)
事業者の職務(一部抜粋)
① 有機溶剤作業主任者を選任し、その職務を行わせる
② 選任した作業主任者の氏名と行わせる事項を作業場の見やすい箇所に掲示する等により周知する
③ 有機溶剤等に関する必要事項を見やすい場所に掲示する
④ 有機溶剤等の区分を色分け及び色分け以外の方法で見やすい場所に表示する
表示例(色分け+文字, 「第1種:赤」「第2種:黄」「第3種:青」と規定されている)

⑤ 作業環境測定士による作業環境測定を行い、記録を保存する
⑥ 局所排気装置とプッシュプル型換気装置の定期自主検査を行い、記録を保存する
⑦ 医師による特殊健康診断を行い、記録を保存する
⑧ 特殊健康診断結果報告書を所轄労働基準監督署長へ提出する
⑨ 保護具を必要な数量(人数分以上)を備え、常時有効かつ清潔に保持する
作業主任者の職務
① 作業者の健康障害を予防するため、作業の方法を決定し、作業者を指揮すること。
② 局所排気装置、プッシュプル型換気装置、全体換気装置を点検すること。
③ 作業者の保護具の使用状況を監視すること。
④ タンク内作業において、必要な措置が講じられていることを確認すること。
※措置を講じるのは事業者。講じられているかの確認が作業主任者。
有機溶剤とその性質
有機溶剤の定義

一般に有機溶剤とは、有機則が適用される44種類の化学物質のことであり、特化則が適用される特別有機溶剤は含まない。しかし、特別有機溶剤は、溶剤として使用される実態があるため、有機則の一部が準用される。
そのため、特別有機溶剤業務における作業主任者は、有機溶剤作業主任者技能講習の修了者から選任する。特定化学物質(特化四鉛)作業主任者技能講習の修了は、規定上では不要な点に注意。
また、有機溶剤は、その含有物を含めて「(特別)有機溶剤等」と区分されることもあります。含有物の定義は以下の表の通りです。

有機溶剤の性状

蒸発の化学と有機溶剤
有機溶剤は揮発性が高い(=蒸発しやすい)ため、蒸発について理解することが重要である。
・温度が高いほど飽和蒸気圧は高くなり、蒸発速度が大きい
→高温であるほど高濃度の蒸気を発散する
→作業場の温度は低い方が望ましい
・蒸発速度は物質ごとに異なる
→混合溶剤から発散する蒸気の組成は、一般に溶剤そのものの組成と同じではない
→思いがけず、有機溶剤の蒸気濃度が高くなる可能性があるので注意
空気中における物質の性状と分類、呼吸用保護具の選択

有機溶剤は、例外的な状況を除けば、蒸気かミストです。かつ、ほぼ例外なく蒸気は発生するため、防毒マスクの理解が重要です。防毒マスクが防げるのは気体だけです。
有機溶剤と健康障害
有機溶剤の体内吸収経路(接触部位)
No.1: 呼吸器(No.2: 皮膚、No.3: 消化器)
激しい労働の際には呼吸量が増えるので、空気中の有機溶剤の吸収が多くなる。
体内に吸収される有機溶剤の量は、有機溶剤のばく露量に比例する。
→ばく露量をできるだけ少なくすることが必要
有機溶剤による健康障害

重要な点は、炎症や麻酔作用は全ての有機溶剤に共通する症状ですが、慢性中毒の各症状は有機溶剤の種類次第だということ。
有機溶剤は、まず接触部位で吸収されます。そして、血液中を循環し、中枢神経に到達します。その後、さらに血液中を循環し、最終的に代謝等を経て、排泄されるか、標的臓器に蓄積されます。この流れの中で、健康障害を引き起こしています。
応急措置(急性中毒による意識消失時)
① 2次災害防止のため、適切な呼吸保護具等を着用して救助に向かう。
② 事故現場の換気を行う。
③ 暗所では必ず防爆構造の懐中電灯を用いる。点火源となり得るもの(ライター、マッチ等)は使用禁止。
④ 救助したら通風の良いところに運び、寝かせる。
※脳に血液(酸素)を回すため、頭の位置が心臓以下の低さになることが大事。座らせてはこの条件は満たされない。
⑤ 衣服を緩め、呼吸を楽にできるようにする。
⑥ 呼吸停止/異常呼吸の場合、速やかに一次救命措置(心肺蘇生, AED)を実施する
労働衛生3管理

+「労働衛生管理」と「統括管理」で労働衛生5管理ともいう。
作業環境管理
工学的作業環境対策
次の優先度で行われる
① 有機溶剤の使用停止、有害性の少ない物質への転換(原材料の転換)
最も根本的な対策で、大きな効果が期待できる。第一に検討する。
② 生産工程、作業方法を改良して発散を防ぐ
③ 有機溶剤の消費量を減らす
④ 発散源となる設備を密閉構造にする
密閉構造内部は有機溶剤の蒸気濃度が高い。そのため、密閉構造を開いて作業する場合は、局所排気や呼吸保護具を利用する等、注意する必要がある。
⑤自動化/遠隔操作で、有機溶剤と作業者を隔離する
パーティションを使った隔離では、作業場(有機溶剤がある区画)が負圧になるように調整することで、有機溶剤の漏れ出しを防ぐ。
⑥局所排気/プッシュプル型換気で有機溶剤の拡散を防ぐ
⑦全体換気で希釈して有機溶剤の濃度を低くする
なお、有機則において、必ず密閉設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置のいずれかの設置が義務付けられている。(吹付け以外の作業かつタンク等の内部の場合のみ、全体換気装置でも可。)
局所排気

つまり、囲い式の方が高効率である。

・外付け式の内、上方吸引型(キャノピー型, レシーバ式)は空気より比重が大きい有機溶剤には効果が期待できない。また、手作業では顔が発生源の上にくるので、高濃度の有機溶剤蒸気にばく露される危険がある。
・局所排気装置は、給気が不足して室内が減圧状態になると、排風量が確保できない
→排風量に見合う給気を確保できる給気口を設ける必要がある
・ダクトは短く、太く、少ないベント数で配置した方が良い
局所排気装置等の点検/検査

なお、定期自主検査には、熱線微風速計等の高価な測定器具が必要なため、外部機関に依頼するのが良い。
作業主任者が行う点検には、目視による損傷等の点検がある。フードを始めとし、各関連設備において、へこみ、変形、破損、接続箇所のゆるみ、異常音等を確認する。
作業環境測定
作業環境測定は、「単位作業場所」ごとに行う。単位作業場所は、作業者の行動範囲と、有機溶剤の蒸気濃度の分布状況を考慮して決められる。

作業環境測定の種類

管理区分

労働衛生保護具(作業管理)
呼吸用保護具
・(電動ファン付き含む)防じん/防毒マスクは必ず国家検定品を選定(JIS規格は×)
・呼吸用保護具は、多様な種類があり、用途に適した選択をする必要がある

ろ過式マスクは上記の2条件でしか使用できないことが分かる。なお、ろ過式の代わりに給気式を使う分には問題ない。
防毒マスクの使用区分

・吸収缶の破過時間はガス濃度に反比例する
給気式マスク

化学防護衣服等
・化学防護衣服等は、有機溶剤が皮膚、眼に付着することによる障害、および皮膚から吸収されて起こす中毒を防ぐ目的で使用される
・化学防護手袋を着用する前には、穴あきがないことを確認する(空気を吹き込む等)
健康管理
健康診断の種類

特殊健康診断は、基本的に半年に1回以上行う必要がありますが(区分2)、特定の基準を満たすことで1年に1回以上に緩和することができます(区分1)。なお、特別有機溶剤には緩和措置はありません。
有機溶剤別の特殊健康診断時検査項目

参考文献:有機溶剤作業主任者テキスト(中央労働災害防止協会)